これは私の直接の体験とまた一部は避難後しばらくして人づてに聞いたものである・・・
その日、石油基地には6基の桟橋すべてに石油船が着桟し荷役していた。
30万トンの原油船も着桟していた。
これまで体感したことのない強烈で長く続いた揺れが収まると海上荷役作業員らは津波の到来を予知しながらも船舶の離桟作業に立ち向かった 残された時間は30分足らずだった。
神業と言えるのではないか・・・
フルバースだった桟橋はすべて離桟完了し全船舶は津波に向かって全速前進した。
最後の原油船まですべての船舶を離桟させると作業員はその瞬間から逃げた。
一目散に逃げた。 皆必死に走った。
防油堤内のタンクヤードに逃げ込む者、グレーチング階段から原油タンクに上る者・・・。
原油タンクのグレーチング階段に上ったところで足を掴む者がいた。
しかしその直後猛烈な力の塊が彼を呑み込んだ。
必死の力で階段レールを掴み踏ん張ったが彼はそのまま波に吞まれていった。
離桟作業に向かった人たちはその後その勇姿を見ることはなかった。
いつも指差し呼称など率先し所内作業者の模範となる者ばかりだった・・・
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