東京Ⅲ
草木花
都市の建物の狭間にて
赤い花一輪見つけた
ひときわの色
そおと掬い取ってみた
都市の路傍の夜の花
車やビルの明かりが行き来する
ただそこに光をまとい
人知れずたたずむ花がある
レンガや石コンクリの建築に挟まれて
あるいはアスファルト路傍にならぶ木々がある
かれらもこの都市の狭間で生きている
有無を言わさぬ堅牢ともいう壁面にある木々の生きざまは
葉を落とした冬の季節がよく似合う
冬枯れの灰色空間がよく似合う
あらわな木肌、荒々しい脈絡を露出した幹
ここに存する生命体はこうして不屈剛毅の存在感を示すのか
風は冷たく
大手門のみなもを揺らし吹いている
春まだ浅い日
少し彩りはじめる木々がある
淡い色を吹かせる風がある
まだまだ肌に冷たい風が吹く
まだ水は冷たく黒い沈黙のままだ
ただ少し季節の色が変わり始める時がある
都会の空に秋の色
乾いた風が吹いてくる
寒々風が頬を吹く
かさこそと木っ端のささやく声がある
ビル空間の秋の色・・・
寂しさやわびしさの心を思ったり
ただそんな都市空間を行く人も
紅に 黄に輝く彩に心楽しませるときがある
木々はやがて少しずつ木っ端を散らし
どこからか寂しげに吹く風に行方をゆだねる
都会の風に秋の色
かさこそとささめく木っ端の声がする
秋がきた
木々はさやかに魂の奥深さを醸し
乾いた光は寂しさを交えた木っ端どもの吐息を照らす
水は冷たく黒く静けさの中に沈黙し
磔刑のごとく木っ端どもを沈める
道々に屯した影は黄昏の訪れを追っては
悲しげな姿に背伸びする
うらうらと変成した光は倦怠と慰安の心に
優しさをささやくように秋の夕暮れを告げる
街の喧騒も息を潜め
都市の大気の感触
冷たく黒く沈んだ水の沈黙
一つの季節が衰耗したかのごとき感覚を帯びて
頬に一迅冷ややかな風が吹く